Interview&Text_Viola Kimura
最終回のゲストは、藤原ヒロシ氏。80年代より日本のDJの先駆けとして知られる。高木完との「タイニー・パンクス」で活躍し日本のヒップホップの黎明期を支え、現在は音楽プロデューサー、ミュージシャンとしても活動しながら、ファッションデザイナーとしても業界から絶大な注目を集める。ストリートファッションにはもちろん、世界的なハイブランドも手を組みたがるほどの影響力を持ち、「ストリート・オブ・キング」とも呼ばれる。国内外のカルチャーシーンを牽引してきた彼に、今の東京や丸の内はどう映っているのか、話を聞いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
丸の内ハウスへは、以前イベントの際にお越しくださったのですか?
「ライブ演奏で来ました。丸の内って普段なかなかくる機会がなかったのですが、こんな場所があったんだなと 」
丸の内の街の印象は?
「ちょうど丸ビルができた頃に、このあたりの開発に携わる方々と周辺をリサーチで歩いたところがあります。まちづくりを、商業施設の箱の中だけで考えるのではなく、仲通りのように路面店を並べて、ストリートをつくっていく、という発想は興味深かったです」
東京の街中を見ていて感じることは?
「どんどん変わっていますね。渋谷に新しい建築物がどんどんできていたりとか。テレビで見たんですが、桜ヶ丘がすごく変わってしまうと知って。あの辺のよく行ってた場所がなくなっちゃうんだな、と少し寂しくなったりしました。まあでも、街や文化は変わりゆくものですからね」
国内外さまざまなところへ行くことが多いと思いますが、最近印象深かった都市はどこですか?
「ファッションウィークで行ったトビシリは面白かったですね、発展途上で、80年代のロンドンを思わせました。コスモポリタンに古いものも残しつつ発展している感じが面白いなと。香港も面白いですね、香港にも、古いものと新時代的なものが混在していて」
これまで情報の流れかたが昔と全然変わってきたと思うのですが、新しい時代やカルチャーシーンを作るといった時に、普遍的に変わらないものってなんなんでしょうか?
「アナログな会話は変わらない。情報として得たり、テキストで会話しているものと、実際に会って会話することには結構差がありますよね」
ITが発達して、アナログなコミュニケーションが損なわれている感覚はありますか?
「損なわれている感覚はありませんが、IT的なコミュニケーションがアナログなコミュニケーションより先に進んでいるのは感じます。それは楽なことでもあるし、あっても良いなと思います。そんななか、ふと人と会って話していると、それでは得られないものが得られることはありますよね。だからこそ色々な人と会って話さなくてはいけないなと思います」
丸の内ハウスもそうですが、商業施設や街中でさまざまな場づくりがなされています。今の時代に、どんな場所があると良いなと思いますか?
「もっと夜中に喫茶店がやってたら良いなと思いますね。夜、お茶しに行こうと思っても、お忍びで行けないようなところばかりなので…。今、みんな夜出歩かないからな。あ、でも、丸の内ハウスは4時までやってるんですね」
夜の喫茶店需要というのは、先ほどのアナログなコミュニケーションの話に通じていそうですね。変わりゆく街や情報、人々の関わりについて伺ってきましたが、最後に、藤原さんご自身にとって今がどんなフェーズで、今後どうされていくのか、聞かせてください。
「僕自身はずっと変わらないですよ。自分勝手に、個人で、皆さんに声をかけさせていただきながら仕事させてもらってます。それはこれからもずっと同じです」
これからの展開も楽しみにしています。本日はありがとうございました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
藤原ヒロシ(ふじわらひろし)
1964年三重県伊勢市出身。高校時代からパンクに心酔し、1982年、クラブイベントのファッションコンテストに優勝し、渡英。ロンドンに滞在したのちは、NYに拠点を移す。帰国後は、日本のDJの先駆けとして知られ、現在は音楽プロデューサー、ミュージシャンとして活動しながら、デザインプロジェクト「fragment design」を主宰、ファッションデザイナーとしても活躍。ストリートカルチャーからハイブランドと組むなど、多岐にわたる活動は世界的な影響力を持つ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・