Text_Viola Kimura
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
TIKI BAR TOKYOも人々のコミュニケーションを生み出すという思いから立ち上がったのでしょうか。
「はい。色々な年齢層や異業種のかたをつなげたいというところからスタートしたミュージックバーです」
ちょうどフロアの中間にあって、ぴったりの場所ですね。
「音楽には世代を越える力があります。今、世代に関わらず80年代の音楽を好む人が多くいますが、若い人たちにとってはまだ生まれていなかったころの曲もあるでしょう。それでも、音楽を通せば時代を超えて語れることがとても多いので、その素晴らしさを共有出来るような場をつくれればと考えました。3月末にはリニューアルして“現バー”として本格的なバーに生まれ変わります。コンセプトは進化しつづけるBARです」
今、まちづくりの文脈で多くのプロジェクトが動いていますが、そうした取り組みにおいてどんなことが重要だとお考えでしょうか。
「そのプロジェクトに取り組む方々が実際に楽しんでいれば良いと思いますが、理屈だけではじめてしまっていてはもったいないですね。提案する側がそこで遊んでいるのか、そこで生活出来ているのか。その経験がないということが多い印象です。客観的な視点も欠かせませんが、実際に体験しているか、というところが大切です。何事も自分の体験に基づいていなければ説得力がありません。僕自身も地域のみなさんとお話ししていて、自分が体験したことについては話せるけれど、そうでないことについてはお話できません。そういう場合は外からじゃないと見えない部分について意見を出す、という立場で関わります」
単純なことですが、実際はなかなか難しいところなのかもしれませんね。
「今はインターネットで調べれば何でも知ることができてしまいますからね。ですが、自分で経験しないと見えないこともたくさんあります。現場に行くのは、自分で見て感じないとわからないことがたくさんあるからです。調べてわかる範囲のことでやっていても、同じようなものしかつくれません。新しいものをつくろうと思ったら、そこから一歩踏み込まないといけません」
丸の内の街並みを10年以上見てきて、今後どうなっていくと思われますか?
「ものすごい変化を遂げてきましたが、これからエリアによってさらに色が分かれていくのではないでしょうか。丸の内全体はもっと商業化していくでしょうし、大手町の方はビジネスが中心になると思います。有楽町ではもっと文化の交わりが起こっていくでしょう。一方で、東京駅を中心としながら、日本橋など歴史深い周辺のエリアとどう関係を持っていくかも重要になるでしょう。そう考えると、丸の内はより独自の色をつくっていかなくてはなりません。新丸ビルのような商業施設のなかで飲食店をやっていくからには、ただ店舗単体の売上げを考えるのではなく、街全体の未来を常に意識していく必要があります。そういったときに、人同士の関係性を大切にしていくことは非常に重要になってくると感じています」
最近だとベビーカーを押してくる女性やお年寄りのかたも訪れていますね。
「はい、平日の昼間ですと主婦のみなさんや、皇居へ出かけられたお年寄りの方々もいらしていますね。週末の日中は家族連れも多いですね。お子さんがいるかたはMUS MUSで食材や調理について質問されていくお客さまも多いです」
多様な人が来るようになった、というのがこの10年の着地点だったかと思いますが、今後はどうなっていくのでしょうか。
「今後は丸の内が東京のなかでの、そして日本、世界のなかでの立ち位置を時代の変化のなかで確立していくのでしょう。我々もどうあるべきか、ということを常に考えてフロアを提供していきますが、実態はさまざまな関係性のなかで変化していきます。東京は世界的にも情報発信の中心として重要な役割を担っていますから、そのなかでも東京駅の目の前で飲食店として絆をさらに深くしてやっていくことが大切。商売ですから競争ではありますが、フロアの別の店舗の問題も自分たちの問題として考えるような姿勢を持つことが、丸の内ハウス全体を良くしていくことになります。そうした姿勢の広がりが、街全体の発展にも繋がっていくのでしょう」
お話をうかがい、佐藤さんご自身のリーダーシップのあり方が、個々との関係性を大切に、みなさんと肩を並べながら、チーム全体の背中を押しているものであることがよくわかりました。
「僕、親父なんで(笑)」
佐藤さんご自身の今後について教えてください。
「今やっていることの延長線上へ取り組んでいくでしょう。まわりの変化もありますから、それに対して受け入れる体制を整えたり、新たな情報発信の場をつくることをやっていきたいですね」
地域ブランディング協会の理事もされていますね。地方から東京を見るとどんなことを感じますか。
「さまざまな分野で東京がハブとなっていますが、人々の生活を考えると地方都市が日本を支えているんですよね。地方が元気でなくなっては日本が駄目になってしまう。日本の中心とも言える東京駅。その目の前で仕事をしているので、これを地域ブランディング協会の取り組みにも活かしていければ。もっと全国の皆さんに丸の内ハウスを活用していきたいですし、我々もサポートできることをやっていきたいです。そうした関係性を引き続き大切にしていければと思います」
2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けて、海外からの来客も増えそうですね。
「そうですね。観光客だけでなくビジネスで来るかたも多いでしょう。食文化が異なるさまざまなかたが、多様な目的でここへいらっしゃるでしょうから、そこへも柔軟に対応していかなくてはなりませんね」
バックグラウンドの異なる人々がここで交わっていくと、丸の内ハウス自体のカルチャーも変容していきそうで楽しみですね。
「はい。東京オリンピック・パラリンピックが終わった後のことも考えていきたいですね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
佐藤 俊博(さとう としひろ)
1952年、山形県生まれ。株式会社TABLEBEET代表取締役。1975年、伝説のディスコ「ツバキハウス(新宿)」の店長に就任。以後、「GOLD(芝浦)」をはじめ数々のディスコや飲食店を手がけヒットさせる。1999年頃からは「食文化」の素晴らしさを再認識し飲食店に注力するように。出店者として丸の内ハウスの立ち上げに当初から参加し、自身も2007年にはフロア内に蒸し料理食堂「MUS MUS」、スナックバー「来夢来人」をオープン。現在はミュージックバー「TIKI BAR TOKYO (3/24〜「現バー」)」のオーナーも務めながら、丸の内ハウス全体の運営にも携わる。一般社団法人地域ブランディング協会顧問なども務める。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・