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VOICE 37. | 2016.February | KEITA MARUYAMA

VOICE.37 KEITA MARUYAMA(デザイナー) | Photography by Keiichi Nitta

Text_Viola Kimura

 

 

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文化継承にも意識が向いていらっしゃるということですが、ご自身のコレクションのなかでも?

 

「はい、西陣織もそうですし、日本の型屋さんで靴をつくったりとか。日本には素晴らしい技術がたくさんあるので、それは使わない手はない。誰かがつくっておかないと、つくれなくなっちゃうんですよね。本当にこれはもう日本に1個しかない、という状況に、誰も警鐘を鳴らさない。個人がものすごく大きな負担を背負わなくてはいけない。そこが日本の薄情なところだなと感じています。フランスとかだったら、国がサポートするとかメゾンが何とかしようという風に立ち上がるんですけど、そういう面で日本はまだまだ文化レベルが低いですよね。昔は寺町でお寺がそういう役割をしていたから、壁画や建築を残したりできましたけど、いまはそういう企業文化を持つ企業も数えるくらいだし、そういうお金持ちがいなくなってしまったっていうところが残念ですよね。日本は、政治経済界の文化的なものに対する理解がまだ浅くて、問題だと感じています」

 

 

 

地方へも赴いていらっしゃるそうですね。生産の現場を見に行っているのでしょうか。

 

「そうですね、工場を見に行く機会もありますが、最近は企業さんの制服をつくらせていただくために足を運ぶことも多くて。その土地の企業の方々が一生懸命その土地の文化を残そうとしていたりして、そういうところがいま、面白いですね。東京で生まれ育ったので東京が大好きですけど、ここだけが面白いわけじゃないなというのはすごく感じます。先日は新潟の酒蔵さんの制服をつくらせていただきました。50代の社長さんが日本酒研究所みたいなものをつくられていて、その建物もやってらっしゃることもとても素晴らしいんですね。ほかにも、帯広の建築会社さんから、皆さんのモチベーションを上げたいから作業服をつくってほしいとご依頼いただいたんですけど、その社長さんも素晴らしいセンスで。東京でもこんな素敵なお家なかなか見ないな、というところにいらっしゃって。そうした地方の方々と一緒にお仕事をさせていただけて、とても嬉しかったです。インターネットの出現で色々なものが近くなって混乱して、いまはすごく落ち着いてきていますよね。これからは、世の中が本当の意味でスモールワールドになっていくんだろうなと感じています」

 

 

 

東京以外の土地の魅力って何なのでしょうか。

 

「いまってあらゆるものがチェーン店化しているじゃないですか。だからこそ、その地に根ざしたお店をつくる、といったことが本当のラグジュアリーだと思います。わざわざ出かけていくことに楽しみがあるんですよね。いまの世の中、コンビニエンスとラグジュアリーというものを一緒くたにしすぎている。もちろんお忙しい方たちの為にコンビニエンスも必要ですけど、ラグジュアリーを望まれる方達にはもっとエンターテイメントが必要。わくわくすることをどうつくっていくか、ということをもっと考えなくてはいけない。似たような店、似たようなビル、似たような街、目をつぶって目を開けたらもうどこかわからないみたいなとこばっかりじゃないですか。それは本当につまらない。海外のお客さまが日本のどこに行くかといったら、京都や、ニセコ。結局、そこでしか体験できないものに魅力を感じているんですよね。新宿の百貨店でハイブランドが並んでいても、別に…という反応で。そこでもし、直島にしかないグッチがあったら? 僕はもう、セットで展開していくっていうのはやめたいと思っています。次やるとしたら、例えば京都にお店を出すなら京都でしかできないことをやりたい。これからはそういうやり方が良いんじゃないかなと思います」

 

 

 

ラグジュアリーって高級なこととかお金をかけるっていうことじゃないですよね。

 

「特別、なんだと思います。特別な経験。なかなか実現できないんですけどね。わかっていただけないことばかりで。ラグジュアリーってゴージャス、とかリッチ、などと訳されがちですが、そうじゃないんですよね。中原淳一さんは、戦中戦後のどん底の時代に、“それいゆ”という本を作りましたよね。そこには、とにかく物のない時代だから毎日白いブラウスを着るにしても清潔にする、ハンカチに丁寧にアイロンをかける、そういう基本中の基本のことが書かれています。手紙をちゃんと書きましょう、とか。そういうことですよね、と思うんです。お金をかける、ということじゃなくて、それをちゃんとやれているということが素敵なこと。もう一度そこに立ち戻ったらいいんじゃないかなと思います」

 

 

 

今後の展望は?

 

「いまは自分のコレクションブランドをグローバルに振り戻す準備をしています。ニューヨークかパリかアジアのどこかはわかりませんが、いずれコレクションの発表の場をグローバルなところに移したいなと考えています。近々では、自分たちが持っている青山の本店をリニューアルして、本店という機能だけではなくて、僕が考えている過去、現在、未来が見える、色々な人たちとのコミュニケーションの場になるようなショップ提案をしたいと思っています。地方へ赴くことも続けていきたいですね。いまの時代、何かを始めるのは東京じゃなくてもいい。僕自身は東京が好きなので離れるつもりはありませんが、何かスタートすることのはじまりが東京じゃなくてもいいなというのはすごく感じています」

 

 

 

 

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丸山 敬太(まるやま けいた)
東京生まれ。文化服装学院卒業。東京、パリ、香港、シンガポールなど、世界の舞台でコレクションを発表。先生な手仕事と華やかで大胆な色使いのフェミニンでエイジレスな服創りは、幅広いファンが多数。自身のブランドの他、ミュージシャン、俳優、舞台の衣装制作を始めブランドのディレクションなど、幅広い分野で活躍。近年では、JALの制服を手がける。2014年に、ブランド20周年を迎えた。

 

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