Text_Satoko Hatakeyama
繊細な墨の濃淡で描かれたウサギが小さなフレームの中で愛らしい表情を浮かべ、大判のキャンバス地の上に描かれたウサギたちが芝生の上を跳ねまわる・・・丸の内ハウスのライブラリーで開催されていたアーティスト河原シンスケさんによる特別展「La Planéte des Lapins(ウサギの惑星)」が、先日、盛会のうちに終了した。1980年代前半からパリを拠点に様々なクリエーションを生み出し、世界中を颯爽と跳ねまわるコスモポリタンの眼に映る、丸の内、東京、日本。
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丸の内ハウス8周年を記念した同展の8つの作品が、各店舗のコースターの図柄に採用されて大好評だったそうですね。「可愛い、譲ってください」とスタッフに申し出るお客様も多かったとか。
「おかげさまで、観に来ていただいたお客様からの反応はすごくいいものでした。今回のエキシビションのテーマは、実は丸の内という場所も意識しているんです。僕はパリに住んで35年になるんですけれど、’83年に初めてパリに着いて飛行機の窓から外を観た時に、芝生の上をぴょんぴょんとはねていたのがウサギ。夢を持ってたった一人でパリに降り立った自分を迎えてくれたウサギは、それ以来、僕のシンボルです。そういう意味でも丸の内でウサギをテーマにしたエキシビションをするということは、同じようにチャレンジングなことだし、当時の自分の気持ちが重なるような気がしたんです。なによりも丸の内ハウスは、東京駅の真ん前で様々な世代の方々が行き交う場所でもあります。多くのお客様に作品を見ていただくことも、僕にとってはすごく意味のあることだと思ったんです」
パリに永く住んでいる河原さんから見て、東京・丸の内という場所はどういうイメージなのですか。
「30年以上もパリに住んでいると、日本に『帰る』のではなく、『行く』という感覚のほうが大きいです。なかでも丸の内は、行くたびにどんどん新しく生まれ変わっている魅力的な街。世界のどの街とも全く違う、常に新鮮な表情があるように思います。モダンなビルのテラスから、クラシックな東京駅の駅舎が見えたと思えば、反対側には厳かな皇居を望むことができる。こんな素敵な場所は世界を見渡してみてもなかなかないです。パリにも素敵な場所はたくさんあるけれど、こうやって高いところから贅沢な風景を見おろせるっていうのは、気分的にもアガりますよね」