(marunouchi) HOUSE

Archives

VOICE

 

Share

 

VOICE 26. | 2015.February | Masaki Yokokawa

voice_PH_19-26-16

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

さらに、規則正しく整備された近代的なこの街にあって、ある種で異彩を放つ丸の内ハウスの特異性を語る。

 

 

「ある方にお聞きしたんです、“ 道路 ” と “ 路 ” の違いを。道路というのは、自動車などを走らせるためのもので、できるだけ真っ直ぐに通りを作り、その端に補足のように歩道を設け、そしてギリギリまで迫り出すように建物が並んでいる。一方の路は、建物なり広場なり様々ができた間に残ったスペースだと。そうなると端が不均一で、曲がったり、裏路地ができたり、無駄な余白が生まれてしまうわけです。だけど、その余白はヒトが止まったり、向かい合ったり、駄弁ったりする自由な場所になり、井戸端会議の会場になったりもする。すると、色々な想像力が集まり、面白いことが始まったり、ハプニングが起こったり、思いもよらない何かが発生することもある。丸の内ハウスには、その余白がアチコチに意図的に残されていますよね。で、その余白が、それぞれのヒトの居場所になっている感じがします」

 

「何を食べるか飲むかも大事だけど、最終的には、誰とどんな時間を過ごすかという話。だって、仕事の打ち上げで来ているお客さんもいれば、会社を辞めたいって言い出した部下を引き止めてる上司がいたり、カップルが仲良くデートしている傍らでは、泣いちゃった女の子を慰めてる男がいたり、色々なストーリーがそこにあって、それらをひとまとまりにすることなんて無理。であれば、その時々のシチュエーションや気分に合う居場所を用意してあげるっていう。賑やかな店、落ち着く店、エレベーターホールの席で食べるか、回廊のテーブルか、それともテラスに出るか、それだけで全然違う雰囲気を楽しめるし、フィットする場所が必ず見つかる」

 

「オープンした当初、あれだけ斬新に映った丸の内ハウスが、その斬新さを変えずに今ではすっかり馴染んでいるのは、不思議に感じることもあります。しかも、お洒落感度の高い方々や海外文化に慣れ親しんだ層ばかりでなく、いい意味で普通の人たち、若い世代から年輩の方まで、それぞれ自由に楽しんでいるのがいい。エイジレス、ジェンダーレス、スタイルレスで、皆が自分の居場所を見つけている。取扱説明書のない空間とでもいうのかな。お店が提供したとおりの楽しみ方をするお客様ばかりでなく、想像だにしなかった楽しみ方をするお客様もいて、でもそれでいいですよね。お店づくりって子育てにも通ずる部分があって、親は確固たる意志をもち、こういう人間に育ってほしいという大きなビジョンを描いていなければならない反面、それを実現するためにアレコレ言う必要なんてほとんどない。言ったところで、子どもの人生をコントロールできるわけでもないし、コントロールすべきでもない。親子であれば信じるしかないし、お客様とであれば、この街で過ごしたいというお互いの気持ちを尊重し合って発展して行くのが、最も理想的だと思うんです。それは取扱説明書にまとめられるものじゃないですよね」

 

 

 

 

最後にひとつ、質問を投げかけてみた。
現在の丸ビルが竣工し、この10年余りで急激に成長を遂げた丸の内。その未来について。

 

「真価を問われるのは、これからだと思います。僕が思うのは、地元の人たちによる昔ながらの祭りが大事なように、この街なりの伝統や土地に根付いたイベントみたいなものが必要だと。そうしたものが生まれてくる予感もあります。引き続き現在も丸の内の開発は進行中ですが、同時に街を深める時期にも入ってきていて、進化と深化が求められていくはずです。今まで丸の内になかった井戸端会議の場所を提供した丸の内ハウス。言うなれば、最も健全でクリエイティブなディスカッションができるこの空間から、丸の内の未来は生まれていくのではないでしょうか」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

横川 正紀(よこかわ・まさき)
2000年に株式会社ジョージズファニチュア(現・株式会社ウェルカム)を設立。インテリアショップ『George’s』の展開を進めながら、2001年にライフエディトリアルストア『CIBONE』をオープン。2003年にはニューヨーク発の食材店『DEAN & DELUCA』の日本での展開を手掛ける。その後も、国立新美術館のミュージアムショップ『SOUVENIR FROM TOKYO』、西麻布の裏通りにネオ・ビストロ『HOUSE』、さらに自由が丘と渋谷ヒカリエに暮らしの商店『TODAY’S SPECIAL』をオープン。衣食住の垣根を越えた新たな試みを重ねて “ 味わいある暮らし ” を提案している。
WELCOME Co.,Ltd.  www.welcome.jp
DEAN & DELUCA  www.deandeluca.co.jp

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

<< Part A

part_next_btn

 

 

 

Archives