PEACEFUL JOURNEY TALK
久保光博(GR8)と岡沢高宏が企んだ、新しい「PEACEFUL JOURNEY」の形
PJ11ゲストアーティストのDURAG DEV
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— 今の20代前半の人たちがやる、ファッションブランドのアプローチの仕方は興味深いです。
岡沢:20年前も同じような感じの人たちがいたけど、今の若い人たちは、また何かしらイニシアチブを自分たちでとってやっている感じがして。ブランドの方向や、販売の仕方だとか自分たちの考えや、やり方がしっかりある。
久保:しかもそれを皆、ソーシャルメディアだけでやっているんですよね。DEVもREVENGEもそうですけど、Instagramのストーリーだけ。写真をあげるのではなく、ストーリー機能だけなんです。
岡沢:それが新しいんだよね。
久保:ストーリーって、どこでどう繋がっているか全然わからないから、僕たちからしたらとにかく謎で。だけどストーリーをあげると、彼らも一瞬で完売させたりだとか。REVENGEのGaretteとAllenが、何故凄く有名になったかというと、XXXTentacionというマイアミ出身の19歳のラッパーがいるんですけど、彼が捕まったことから、釈放することをサポートするために作ったブランドだったんですよ。XXXTentacionがもの凄い数のフォロワーを持っているのも知っているし、彼のファンってオカルト的なファンがほとんどなんですけど、そういう層もREVENGEはきちんと掴んでいる。Garetteは元々、XXXTentacionにロゴを作ったりしていたんですけど、彼はもの凄く天才で、酒は飲まない、パーティは行かない、家から出ない、アニメをこよなく愛しているという19歳のオタクなんですよ(笑)。現在、REVENGEでは、Ski Mask The Slumpgodというマイアミのヒップホップアーティストをサポートしています。
岡沢:僕は彼らがくる数ヶ月前までは何も知らなかったんですけど、久保くんのお陰でXXXTentacionやSkimask the Slumpgodを知って、彼らのノイジーな曲を聴いているうちに凄く好きになってしまった。XXXTentacionの「Look At Me!」などは、PVも物議を醸しているけど、ヒットした背景なんかも今っぽくてとても興味が湧きました。
久保:しかもSkimask the Slumpgodは、まだ19歳にも関わらず182万人フォロワーがいる(笑)。XXXTentacionは624万人フォロワーがいます。彼は「Complex Con」にも出ていたりするんですけど、稼ぎ方の桁が違う。今の若い子たちは、すぐに成功できるやり方を知っているんです。しかもストーリーだけでという。日本だと若い世代にいい感じの人たちがいても、そこができない環境にあるので残念だなと思うときもありますね。
岡沢:入り組んだ中で生活をしてきていたら、それなりに腕力だとか人間らしさが必要になってくる場面がある。でも日本だと、それがダメなことになっているし、子供たちもみんないい子だから。だからこそ、イベントに来てくれた人たちは、多少なりとも何かしらの空気感を味わってくれたのではないかなと思います。しかも場所が丸の内ということもあって、ちょうどいい温度感で伝えることができたのではないかなと思います。それともうひとつ重要だったことは「PEACEFUL JOURNEY」 は、UNITED ARROWS、BEAMS、BAY CREW’S、WILD LIFE TAILOR(JUN)が協力をしてくれてやってきたイベントだったので、彼らのような人たちにも良い刺激になるような内容のイベントを、久保くんを通じてできたのではないかなと思いました。
— 当日はどのような人たちがやってきたんですか?
岡沢:髪を切ってもらいたい人、REVENGEの商品が欲しい人と色々でしたね。DEVに会いたいだとか。
久保:あとはドゥーラグが欲しい。みんな欲しいから髪を切ってもらって、ドゥーラグを巻いてって。
岡沢:このドゥーラグ、潔いんですよ。最初に観たときは50Centや’90年代のラッパーがしている感じだと思ったんですけど、そういう流れを分かっている上で、今やるみたいな。影響されているブランドが、GUCCIやRalph Laurenに加えて、今の若い世代には並んで、A BATHING APE®が入ってくるのが面白いと思いました。A BATHING APE®の柄は彼らにとってすでにヴィトンやGUCCIと同じくらいフェイマスなパターンになっている。
久保:19歳くらいのアメリカ人が、A BATHING APE®をリスペクトしているというのが良いんですよ。今のA BATHING APE®の頑張りもあってこそですがやはりNIGO®さんの残した功績は、凄いことだったんだなと思います。それで、そのドゥーラグをみんなお洒落に巻いている。
岡沢:そう。すごく取り入れ方が上手くてほんと世代が違くても僕らもすぐに影響を受けてしまっている (笑) 。
丸の内ハウスも11年目を迎えて、10年間やってきたことからさらにプラスして刺激のあることをやってみても良いかなと思いやってみたんです。今回はまったく異なるジェネレーションで、カルチャーもこれまでと違うかもしれないことを、実験的にできて良かったなと思っています。僕自身も刺激が欲しいし、なるべく若い人たちのカルチャーや音楽はチェックしたり、聴いたりしていきたいなと思っているので、これからも若い人たちを取り入れたイベントをやっていけたら良いなと思いますね。
久保:岡沢さんも、僕も昭和50年生まれなんですけど、カウンターカルチャーを知っている最後の世代なんですよ。カウンターカルチャーでないとダメなんじゃないかっていう。僕らは気付いたらファッション業界にいるのが長くなってしまったんですけど、周りがどんどんいなくなっていく中で、それでも残った50年生まれなんです。だからこそこういったカウンターなカルチャーが今でも大好きなんですよ。
岡沢:それで一緒に楽しみたい。影響もされたいし、彼らに期待しているんです。偉そうなことを言っているのではなく、一緒に僕らのような世代とも遊んでくれることへの期待と、いい意味でも悪い意味でもコンサバティブに固まり出している日本へ何かを伝えることができるんじゃないかという期待。そこを僕たちなりに楽しみながら、与えることができたらいいなと。
久保:特に日本は、若い人たちのエネルギーがこれからの日本を築き上げるためにどれだけ必要かってことをもっとわかった方がいいと思います。若い子たちをもっとサポートしてほしい。
岡沢:だから僕が思うに今回のDEVやREVENGEがやってきたイベントを機に、これからは日本生まれの、日本のカルチャーを、丸の内と言う場所も使って紹介をすることに力を入れてみたいですね。不安っていうのを捨てきって、年齢関係なく勢いのある格好いいものがあればサポートしていきたい。約4年間「PEACEFUL JOURNEY」をやってきて毎回勉強できているんですけど、今回はこの場所で、その空気感だけも伝えられたのではないかなと思います。
— 普通に丸の内ハウスへご飯を食べにくる人もいたかと思うんです。その人たちはどんな反応を示していましたか?
岡沢:彼らがDJをやっていたところを通りがかって、盛り上がりにビックリしてました。7~8割の人たちは観たり、す〜っと通るだけでした。だけどかなり印象に残ったんじゃないかなと思います。これが良くも悪くも東京の現実(笑)。今回の丸の内ハウスでいつもと違った「PEACEFUL JOURNEY」を開催できて良かったです。終わった後は、丸の内ハウス店舗のスタッフたちも凄く喜んでくれた。最近思うことは、日本がカルチャー発信の場所として、飛ばされてる感じがするんですよ。
久保:アメリカとかでは凄く人気があって、アジアでも人気があるのに、日本へくるとパーティーやライブに人が入らなかったりする現状があり温度差を感じます。原宿なんかも、アジアの人たちがやってきてゆっくり買い物をするような街になっている。
岡沢:いい意味でも悪い意味でも、若干、日本が休憩所になっていますよね。だからこそもう一度、いろいろな価値観をシャッフルして、これからもこの丸の内ハウスから新しい価値観を発信できたら良いなと思います。
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久保 光博
ラフォーレ原宿にて展開するセレクトショップGR8 オーナー兼バイヤー。またトップクラスのモードブランドから、若手が発信する新鋭ブランドまで、久保氏の独自のコネクションによるセレクトで、国内はもちろん、海外からも絶大な信頼と人気を誇る。また各国で開催されるファッションウィークでは、日本を代表するファッショニスタとして数々のメディアに登場。2017年にはBoF500 / HB100 / TOP 10 RETAILERS等に選出され、カルチャーをバックボーンに、ファッション界に刺激を与え続けている。
https://gr8.jp
岡沢 高宏
1975年東京都新宿出身。デザイナー。 国内外のモデルを経て2000年よりデザイナー活動をスタート。自身のブランドCYCLE、CLSやMIZUNO、Levi’s® のデザインディレクターも手がけてきた。機能性や革新的なものつくりを意識したプロダクトを発表することと同時に、環境や社会への還元も積極的に取り入れるなど独自な視点での活動を続けている。
現在は、クリエイティブユニットTHE PRIMAL BUILD名義でアパレルレーベル「INQUIRIMG」を主催。
http://takahirookazawa.tumblr.com
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