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the MOTHER of DESIGN meets Cosmos 「COSMIC GIRLS」| ARTIST TALK


 

放射能の歴史を辿り、これからを考える

 

若木:放射能は、悪影響を及ぼすものと考えられているけれど、それも1601年たたないと半分にならない。半分になってもまだ影響がある。それをさらに半分にするのは、また何千年もかかる。そういうものが今生活の中に降り掛かってきているという現実が、すごく怖いし、悲しい気持ちになってきます。小林さんがこのポスターに書いたストーリーを読んでいると、そこがただ絶望的なわけではないと、どこかクールな視点で見ているような気がして。そういうことを、他の作品を見ていても個人的に感じています。小林さん持っている、同じ時代に世界で起きている様々なことがまとめられている本が面白くて。同じ時間に何が起こっているかを対比という視点でずっと子供の頃から見ていたと以前伺ったことがありましたが、それが何かきっかけになったのか。それと地震以前から研究していたことが重なって、たくさんの本も書かれています。今の状況を、どのような視点で見ているのですか?

 

the MOTHER of DESIGN meets Cosmos 「COSMIC GIRLS」| ARTIST TALK小林:「ひかりのこども」という、放射能の歴史を辿るコミックを連載しているのと、「マダムキューリと朝食を」というキューリ婦人が放射能という言葉を発見した同時代に生きていた猫と、2011年生まれの女の子を主人公にした小説を出しています。地震の後は、放射能について、いろんな捉え方が出るんだろうなと思っていました。

 

若木:次の世代、僕たちは地震を経験して、実際に目で見ているけれども、経験していない若い世代の人たちに向けて、事実をどのように捕らえたらいいかということを知る新しいガイドですね。今まで報道の中で、伝えられてきたことも、全然違った目線で見ているから腑に落ちる部分も多かった。

 

小林:どのくらいまで遡って物事を考えたらいいのだろうか。目の前のことで、みんな忙しいし、すごく考えることもたくさんあると思うけど、何年さかのぼると原因というか、何年前からやり直すことができたら今のこの現実を変えることができるんだろうと考えたことが始まりで、100年遡って、キューリ婦人が放射能物質を発見することを止めていたらどうなっていたんだろうか。50年さかのぼって、原発を作らなかったらどうだったんだろうかとか。でもそれは、キューリ婦人が発見するもっと前の時代から光を求めていた何かがあっただろうしと考えているうちに、生きている今という時代は、未来から考えるとその時の選択が100年後に何かの影響を及ぼすかもしれないと痛切に感じて。そういう気持ちを書きたいと思って書いたのがこの作品です。

 

若木:文章を読んでいると、放射能が悪いといわれて、もう回避できない状況になったとき時は、人間のこれから生きて行く中で避けられない状況、例えばご飯を食べないといけないとか、呼吸をしないと生きていけないということと、同じような感覚になってきている。放射能は、避けられないものの一つとして考えなきゃいけないと感じました。

 

小林:そうなのかもしれません。このポスターの裏にあるカレンダーは、今年からの半減期3503年まで続いているもの。是非部屋に飾って一年ごとにチェックしていってほしいですね。3503年の中では、2014年はまだ2列目くらい。残り何列も残っているということをチェックしながら、このカレンダーを使ってもらえたらいいなという思いで作りました。

 


 

アーティストの独特な視点

 

the MOTHER of DESIGN meets Cosmos 「COSMIC GIRLS」| ARTIST TALK山本:美術館とか写真展は、そこにいく人や見たい人が見に行く。でもそれを知らない人、偶然出会ったものに心が動かされる。そういう機会を作って行きたいと思って、丸の内ハウスでアートイベントを開催し、幸いなことに毎回期待に答えてもらえています。想像以上の作品が生まれると、作家さんとのコラボレーションって本当に楽しいなと思います。駒沢のバワリーキッチンというカフェが10周年の時、若木さんに写真を飾ってもらったことがあるんです。被写体がもちろんあるんですが、被写体から受ける印象というより、若木さんの視点を感じられた。若木さんがいる!みたいなパワーを感じました。今回ラジウムのことや半減期のことを書いてもらっている中にも、小林エリカさんの視点がある。そういう意味で空間に作品を飾ることは、作品の直接的な原因ではなく、違う人の視点がそこにあるようですごく楽しいですね。

 

若木:色のセレクトも面白いですよね

 

the MOTHER of DESIGN meets Cosmos 「COSMIC GIRLS」| ARTIST TALK

小林:光っているんです。ラジウムってすごくキレイに蛍光に光るらしいので、この黄色を選びました。

 

山本:この色が入ったことで、フロアの印象が引き締まったような気がします。夜は光って見えたり、色々な効果があると感じました。若木さんもお店を見てこういう作品を飾ろうとか。僕は、お店という箱を作ることが仕事なので、なんとなく経験の積み重ねで、イメージを作りやすいんですが、みなさんもしかしたら初めてお店に行って見て、色や作品の仕組みをイメージする。そのイメージが、どのようにして出来上がるのかを知りたいです。

 

小林:でもそもそも、こういう場があることが面白いですよね。自分もたまたま入った喫茶店で、たまたま見たものを、何十年もあとに思い出すことってすごくある。そういうことに似ていますよね、こういう場所での展示は。面白いなと思います。

 

若木:空間の強さは、ありますよね。記憶として蘇ってくるときに、ものすごく強烈に自分がそこで何をしたか、どこに立っていたかということが一緒に蘇ってくる。目で見たものが持って帰れるということも、またちょっと新しく感じます。印象が違うから記憶に残ると思うんですよね。

 

小林:でも、写真も面白いですよね。一瞬一瞬を撮っているのに、何年後かに編集したり、展示するとまたちがったものに見える。脚本を書いて若木さんに監督してもらって作品を一緒に作った時、自分の文字だけでしかなかったものが、こんな風に時間と空間を伴って、こういう表現があるんだと感じたことが、何より面白かったです。

 

若木:今、来年公開になる吉本ばななさんの『白河夜舟』という短編小説の映画化で監督を務めています。CMは、コンテをもとに撮影することが多いですが、映画はコンテを書かないことが多くて。その代わりに脚本からインスピレーションを出し合うんです。美術さんからは、この話には、こういうセットが必要とか、僕らからは全く読めないものを持ってきたりする。照明さんはこういうイメージの照明とか、衣装さんはこういう時はこういう服を着ているでしょうとか。それぞれスペシャライズされた人たちが意見を出し合う。それらをまとめて行くという作業なんですよね。

 

小林:私、白河夜船もすごく大好きな作品。高校生の頃よく読んでいました。それが若木さんと、そのスペシャルなチームでどういう風に映像化されるのか今から楽しみです。

 

 

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