アート活動をしている上で感じる、東京とNYの違い
Y:青崎さん東京に住んでいたことはあるんですか?
A:あるんですけど、その時はまったくアート活動をしていなかったんです。だからそういう目線で東京という街を見ていなかったんですよね。
H:住んでいるところ、文化によって反応が全然違いますよね。この前、SEPHORAの仕事で、コラージュのワークショップを行ったんですけど、どういう人がくるかとか全く分からなかったけど、結果いろんな人が来てくれて、人種も国も違う人たちが集まってくれたその光景をみていて、それぞれが良いと思った事とかどういう目線でアートを見ているかとかが全然違う。それがすごく面白かった。
Y:NYでアーティストの方々にあって、日本はもったいないなって思いました。みんながNYに活動場所をどんどん移していってしまう。是非こういう人たちが東京でも活動してくれるといいなと思います。
H:そうですね、こういう展覧会を逆にアメリカでやったり、日本を世界に発信して行きたいですね。テクノロジー的なことが日本人は上手いとアメリカの人たちはすごく言うけど、クリエイティビティの部分ではすごく少なくなって来ている。
Y:そうですね。先日武蔵野美術大学に講演で行ったんですけど、今生徒の8割、9割が女の子で、男の子がすごく少ないんですって。その理由は、経済が不安定になってきて、男の子が安定を求めて、クリエイティブなことをしなくなってきている。だからこういう展覧会見てもらって、もっと東京の人がクリエイティブに魅力を感じて、目覚めてもらえたらいいなと思った。NYから東京の若い人たちに、魅力を発信していってほしいなと思っています。
藤高(以下、F):昨日聞いていて面白かったのが、青崎さんがアーティストになる前は日本でサラリーマンをしていたという話を聞いて、どうしてアーティストになったんですか?と聞いたら、長期的に考えたら、アーティストの方が生活が安定していると思ったと話していて、それすごく面白かったですね。
Y:その発想がアートだよね(笑)実際には大きな会社に入ることも不安定なんですよね、自分のポジションをキープできない。アーティストというのは自分のポジションを自分でコントロールする。だからこっちの方が安定しているって言うこともできるよね。
H:それ面白いですね。
Y:でも青崎さんの作品制作の過程で傷つくことってありませんか?例えば、『FROM HERE TO THERE』で、道を聞いても教えてくれないとか。
A:そうですね、様々な反応がありますね。最近では、iPhoneのGoogle Mapで地図を見せてくれる人がいたり。だから地図を描くという行為もなくなってきているんですよね。昔は人それぞれの地図というのが頭の中にあったんでしょうけど、今ワンクリックで地図がでてくる時代だから、なくなってきている行為なんですよね。15分くらい歩いてその場所まで一緒に連れて来てくれる人もいました。その周りの街がどんな変化をしてきたかとかを説明してもらいながら。
Y:青崎さん、やっぱり面白いですね。ヒシャムさん最近電車に乗って行うイベントがあったそうですね。
H:ヴィジュアルアーティストのダグ・エイケンと一緒に行ったイベントですね。彼とは2007年くらいから一緒に作品を作っているんですが、今回一緒に行ったのは電車を改造してアーティストのコミュニティが一緒に旅をしながらパフォーマンスをしていくというテーマで『Station to Station』という作品を作りました。
Y:見に行きたくても、チケットも全然取れなかったという大盛況なイベントだったんですよね。
H:アメリカと日本でアートの面で似ているなと思うのは、アートのことをわかる人しか見に行かない。だから僕がこういう場所でのパフォーマンスが好きなのは、普段は触れられない世界に触れてくださいって思うから。コミュニケーションのためにあると思うんですアートって。定期的にここで青崎さんにも『Smily Bag Portrait』を行ってほしいです。Y:今回僕がこのイベントで感じたのは、作品はもちろんなんですけど、アーティストのみなさん、人が面白かった。江口さんも自由奔放な感じで面白かった。作品をみて人となりがすごく表れているなと思って。本来は作品を作っている人の顔とか人となりは必要ないのかもしれないんですけど、実際にはその人のイキザマみたいなものが今回すごく面白かったなと思っています。ちなみに今NYで面白いところはどこですか?ご飯が美味しいとか?
A:クイーンズは、ご飯すごく美味しいところが多いですよ。
H:タイ料理とかインド料理とかベトナム料理とか、すごく美味しいところが多いです。ローカルの人が行くようなお店が多いですけどね。
A:是非、次NYに行く時に!
Y:そうなんだ!こういう話掘り下げて行ったらすごく面白いんでしょうね。彼らが見るNYというか、僕らがガイドブックで見るNYとは全然ちがうNYが見えているはずなので、本当はもっと色んな話を聞きたいです。素朴な質問ですが、NYに行った理由というか、東京ではだめだったんですか?
H:NYがベースだと世界が近くなるというか、世界に繋げられる可能性がある。今16年住んでいて、コミュニティもものすごく広がった。それは、音楽にしてもアートにしてもジャンルレスな文化だからだと思うんですよね。
A:僕は、NYに憧れがあったんですよね。アンディウォーホールとか、ベルベットアンダーグラウンドとか、NYの音楽もカルチャーもすごく好きだったので、別のところが思い浮かばなかったからですね。でも今回日本に久しぶりに帰って来て、日本で何ができるんだろうって考える良い機会になりました。日本の美術館での展示を見たり、アーティスト同士の中でどういう会話がされているんだろうとか、自分の中で視点を広げる良い機会になりました。
H:青崎さんみたいにアメリカのフィルターを通して日本に帰ってくると、また違った見方ができると思うし、全く違う作品作りができると思う。僕は日本によく帰って来ているので、そういう時にどんな人がアートの世界に興味があるのかっていうのを良く見ているんだけど、NYだとチェルシーっていうアートに溢れた街があって週末はアートにさほど興味がなさそうな人もいるけど、日本だとこの場所に行けばたくさんアートが見れるという場所があまりないような気がする。あってもすごく行きにくい場所だったり。どういう風に自分の作品を通して会話ができるか、どういう風に作品を見ているかというのを研究しています、日本で。
Y:海外で活躍しているアーティストの人たちに力を借りて日本のアートシーンを変えて行くということを是非していけたらいいなと思ってます。
» JAPANESE ARTISTS IN NEW YORK
EVENT GALLERY
他のアーティストの作品等を紹介。
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「似顔絵パフォーマンス:Smily Bag Portrait」
トークイベント終了後、アーティスト青崎伸孝の代表作品である『Smily Bag Portrait』のライブパフォーマンスが行われた。ニューヨークで一般に広く使われている買い物袋「スマイリーバッグ」のスマイルを元絵にして、市内各地で通行人の似顔絵を描くプロジェクト。完成した似顔絵は、モデルをしてくれた人に無償で提供している。会場に来ていた子供から大人まで楽しんで参加できる内容とあって、たちまち長蛇の列が連なった。似顔絵を描く時間はおよそ10分程度。スマイリーをベースに出来上がるその似顔絵は、短い時間の中で、青崎なりのモデルとなるその人の特徴を忠実に捉えた作品となっている。
「LIVE PAINTING:LIVE SQUIGGLE」
真っ白いキャンバス板を抱えるようにして、ペンを走らせたヒシャムアキラバルーチャのライブペインティング。完成後、彼に作品のコンセプトについて話を聞くと「自分の中の考えは、ずっと動いている。ひとつのことを思いついた時も、気づいたらまた違う事を考えている。その流れ、自分の感情とか感じたものを表現した」と話す。描いている時は、完成系をイメージしながらは描かない。その理由を訪ねると「その場でやることが凄く好き。決めないで入るドキドキ感と終わった時の快感がすごく好きだから」と語った。即興で作品作り上げることは、音楽活動でも同じ。その場で受けたバイブレーションを感じながら、作品を作って行く、彼の今後の活動にも期待したい。
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