ALDENの履き心地の良さの秘密
土井地:今、木型の話が出ましたが、今日は片足の靴と靴をばらしたものがあります。これはALDENの990というもので。木型の中でも一番定番なものを使用してつくられたもの。血脇さん、木型の流れも含めて説明をお願いします。
血脇:これは、最も古い1930年からある木型に、1935年に開発されたパターンで作られています。それから形も木型も変わらず、現在も作られている990というALDENの靴です。
土井地:990っていうのはなぜ、そう呼ばれるようになったんですか?
血脇:ALDENの面白いところは、一足一足に数字で番号を付けて行くんですけど、色が変わっても紐が変わっても、1つ何かが変われば数字が変わる。990は、たまたまついた番号が990だった。これが黒になっただけで、9901という品番になる。990は一枚の革コード板でできていて、これ一枚で馬のお尻半分の革を使用します。99Oは、一足作るのに、馬一頭分の革を使う貴重な靴なんです。他の靴はパターンを組み合わせて作っているので、一足作るのに一頭ということはないんですが、990に関しては貴重であり履き心地もすごくいいんです。
土井地:先ほどのコルクのバランスと革のバランスが履きやすさをつくりあげているんですね。
血脇:ここ最近、991という型が世界的に人気があり現状自分のサイズがないと2年くらいお待ち頂いています。
土井地:ALDENって、革の表情が毎回履くたびに変わりますよね?
血脇:一足一足、革の素材で表情は変わります。今回展示しているのは、コードバンといわれるものだけですが、ALDENの定番といわれる展示右側のものは、全てバーガンディの色で揃えています。でも一足一足少しずつ違う色の表情になっていて、その時の具合や、手入れの仕方で変わってくる。そういう意味でもコードバンの魅力があります。左側は、各セレクトショップさんの別注した靴です。
各社、別注して作られたALDENのこだわりのポイントとは
土井地:自分が仕入れた中で、気に入った別注は何ですか?
中山:BEAMSとしては、2つのレーベルでALDENを別注しています。一つはInternational Gallery BEAMSと、BEAMS PLUSで別注した2つのALDENを展示しています。International Gallery BEAMSで取り扱っているものは、昨今シューズのトレンドでもあるネイビーブルーのスウェードを使い、かつALDENでも人気のあるモデルでタッセルのローファーに落とし込んだもの。ブラウンスウェードを使った、これもALDENを代表するモデルなんですけど、Vチップのモデルです。BEAMS PLUSは、チャッカモデルで、こちらはどちらかというとオールウェザーの全天候型対応のイメージで、突然の雨が降り出しても対応できるようなモデルとして、クロムエクセルという先ほど紹介したコールバンと同じ革、ワークブーツとかハンティングブーツに使われているような素材を使い、かつ素材をフレックスソールにしてアレンジしたワイルドな感じのモデルを別注しています。
土井地:WILD LIFE TAILERは、どうですか?
迫村:今3型展示させてもらっているんですけど、どれもすごく仕上がり含めて気に入っています。ブランドにテーラーという名前が付くのでスーツが軸にはあるのですが、当初スーツでトラディショナルな靴とか、そういう品揃えをしてもブランドの歴史もまだ浅いし、そんなに面白くないだろうと思っていて。スーツにコンバットブーツ履いてるようなスタッフがいたり、そういうところからイメージしていってALDENの中でも、“ゴツい”方がいいんじゃないかっていうことからポストマンシューズみたいなALDENが産まれた。ミリタリーラストでプレーントゥでプランテーションソールをつけるという結構ゴツくて、ポストマン風の仕上がりは、お客さんにも好評で、今入荷待ちの状態。僕自身もすごく気に入っています。今後は、ローファーにタッセルがついたものの別注をしているところです。なかなかやっぱり思った通りのスケジュールで商品が上がって来ないので、オーダーをたくさんいれてますが、果たして納品される頃に自分がいるのか…みたいな(笑)。
土井地:2,3年待つのなんて普通ですんもんね。UNITED ARROWSさんはどうですか?
内山:みんなALDENの魅力は共通してますよね。でもそれぞれのお店の特徴が出ていて面白い。ミリタリーラストの魅力は、“ボリューム”。短めのパンツや、コーデュロイやツイードといったボリューム感のある素材とすごく相性がいい。各社同じ木型、同じデザインで、同じアッパーのデザインだけど、そこから先はカジュアルなものにも合うボリューム感をあえて消すようにしたり、ソールを厚みがあるものではなく薄いものにしたり。ボリュームを削ってシャープにして、よりシャープなものとの相性を良くしたり。イギリスの靴やフランスの靴など美しい靴はたくさんあるけど、ALDENはそういうものとはちがうアプローチがある、シャープだけどアメリカ製の持つ独特なボリューム感はそれぞれの別注に残っている。それがすごく面白いですよね。
土井地:同じミリタリーラストにもそれぞれ解釈が違いますね。ただ共通項や共感できる部分があるから面白い。
内山:今日はローファーもいろいろ展示されていますが、UNITED ARROWSからは、色焼けしているものを堂々とおかせていただいていて…大変申し訳ないんですけど(笑)。色の変化がそれだけしやすいものというのが一目でわかる。ローファーといえばバンラストといわれるくらいの木型一つを使ったもの。あと、トムラストといわれる木型をつかったものもあって、素材は一緒ですが、木型が違うだけで、どれだけ雰囲気が違うかということも比べられるいい機会です。趣味趣向がそれぞれあると思うので、バンラストとトムラストどちらが良い悪いは、好みですけどね。一般的に“壁がたっている”というんですけど、バンラストは、カクカクしている型。トムラストは、その壁がなくなってシャープに丸くなっている型のこと。UNITED ARROWSとしてはバンラストを展開していた時期もあったんですけど、トムラストを20年近く展開させてもらっている。バンラストの魅力は、ALDENの魅力の一つですが、バンラストのボリューム感がカジュアルすぎるかなということで、UNITED ARROWSではトムラストですこしシャープに仕上げています。ちょっとした違いで違う表情を出せるのが、今回各社の別注を見比べるいい機会でしたね。
小木:弊社内山は、ALDENの靴を90足くらい持っているんですよ。
内山:私事で興味ないと思うんですが、自分で購入したのが今までで106,7足。10代から買い始めて、それくらい持っていますね。
土井地:今日は、ファッションイベント第一回目ということでALDENのお話をしましたけれども、いかがでしたか?
中山:僕自身、初めてトークイベントに参加させてもらって、みなさんの考えていることが共有できて面白かったです。みんな熱い想いは一緒なんだなと再認識できました。
迫村:ゆるい感じで準備してきましたが、これだけの人に来ていただいて、楽しく聞いていただけてすごく嬉しかったです。ファッション好きなもの同士、みなさんとこうやって時間を共有できたことは嬉しかったです。
内山:細かいうんちくは今やネットで見れる時代。ALDENは、知れば知る程面白いと思います。いろんな魅力があるので是非知ってほしいですね。
血脇:履いた事無い方は、ALDENを履いてみてください。合わなかったら、合わないであきらめていただいてもいいので、是非一度試して頂ければと思います!
小木:今回のように、色々なショップの人たちが集まってこういった話をすることがあまりない機会だったので、今日はとても面白かったですね。ありがとうございました!