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2025

1.1 Wed

HAPPY NEW YEAR 2025

ひと飲みに

 

ひと飲みに

古来より日本には蛇信仰がありますが、それは蛇の生命力と毒、強さ、脱皮をするという再生力に人々が注目していたからでしょう。民俗学の分野において特に白い蛇は神の化身として、また弁財天の使いとして人々に幸せをもたらす象徴として各地方に伝説が残っており人々から崇め奉られてきた伝承文化があります。一方で時には人々に災いをもたらす存在として人々に畏れられてきました、人々は蛇を通じて自然の恵みと脅威に隣り合わせて人生の意味を知ったと言えるでしょう。
蛇と言えば有名な日本神話に八つの頭を持つ八岐大蛇ヤマタノオロチが登場します。天照大神(アマテラスオオミカミ)の弟の須佐之男命(スサノオノミコト)は出雲国で人々に災いをもたらしている八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治しました。退治した時に大蛇の体内(尾)から見つかったのが神剣である天叢雲剣は草薙剣とも言われています。草薙剣は八咫鏡、八尺瓊勾玉とならぶ三種の神器の一つで)、三種の神器の中では天皇の持つ武力の象徴であるとされています。スサノオノミコトといえば、大変乱暴者の神様でその振る舞いに悩んだアマテラスオオミカミは岩屋に閉じこもってしまった神話が有名です。世界が暗く閉ざされ困り果てた神々は天照大神が閉じこもった天岩戸の前で賑やかな宴を催しました。あまりの賑やかさに天照大神がのぞこうと岩戸から顔を出した際に、天手力男神(あまのたじからお)が引っ張り出します。そこで布刀玉命(ふとだまのみこと)が「尻久米縄(しりくめなわ)」を張り、岩戸へ二度と戻れないようにしたという話です。
このとき登場する「尻久米縄(しりくめなわ)」すなわち「しめ縄」は、縄を撚り合わせてつくられていることから、まるで2匹の蛇がからまった姿に見えるとして蛇の姿を模したものという説もあります。

日本の救急車には杖に巻き付いた1匹の蛇のマークがついています。これはアスクレピオスの杖と呼ばれるもので、ギリシア神話に登場する名医アスクレピオスの持っていた蛇の巻きついた杖です。日本と同じようにギリシャ神話の時代から蛇が持つある種の神秘性に人々が注目していたことが分かります。現在では世界保健機関(WHO)をはじめ医療・医術の象徴として世界的に広く用いられているシンボルマークです。家族や友人、大切な人たちの命を守り、次の時代に希望をつないでいく象徴としての蛇について私たちはもっと深く考えなければいけないのかもしれません。
2025年、世界的に「ひと飲みにするか」はたまた「ひと飲みにされるか」そのような力による競争、または紛争が加速する日常の中で置き去りにされる大切なものを見失わないようにしたいと思います。

画家 佐藤真生

 

 

 

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