「Are you ready ?」
中唐時代の呂洞賓(りょどうひん)は、10の試練をクリアし仙人になった人です。中国八仙人のひとりで王から民衆まで多くの人々から尊崇されてきました。「有求必応」の仙人といわれ、願い事をすれば必ずかなえてくれると信じられています。
呂洞賓はよく龍と対戦をして遊びました。手に持った水がめ(私の作品に場合は瓢箪にしました)の蓋を取るとゆらゆらと煙が出てきて、やがて天に上りその煙は大きな龍となりました。さあ龍と戯れる楽しい時間の始まりです。
「Are you ready ?」
画家 佐藤真生
十試 (呂洞賓が鍾離権から受けた十の試練)
第一試
ある日、洞賓が外出し戻ってくると、家族全員が病死していた。彼は嘆くことなく淡々と葬儀の準備をした。しばらくすると、死者はみな生き返ったが、呂洞賓は全く怪しまなかった。
第二試
ある日、洞賓が市へ物を売りに行き、その値段を決めたが、相手が前言撤回し、値段の半分しか払わなかった。しかし、洞賓は何も言わなかった。
第三試
洞賓が元日に門を出ようとしたところ、乞食が施しを求めてきたので、洞賓は物を与えた。しかし、乞食はさらに物を要求し、その上罵りだした。しかし、洞賓はただ笑って謝るのみであった。
第四試
洞賓が山中で羊を放牧していると、一匹の飢えた虎が羊の群れを追いかけてきた。洞賓は羊を下山させ、身をもって虎の前に立ちふさがると、虎は去っていった。
第五試
洞賓が山中の道舎で読書をしていると、突然、17、8歳の絶世の美女がやってきた。母の元から帰るところなのだが、日が暮れてしまったので、休ませて欲しいという。夜になると、女性は何度も誘惑したが、洞賓は最後まで心を動かさなかった。女性は三日経った後、去っていった。
第六試
ある日、洞賓が外出し戻ってくると、家の財産が全て盗まれていた。しかし洞賓は怒りの色も見せず、自ら耕し始めた。すると、鋤に何か当たるものがある。掘り起こしてみると、数十の金錠(貨幣となる金塊)であった。しかし、洞賓はそれを土に埋め、一つも取らなかった。
第七試
ある日、洞賓は街で銅器を買って帰ったが、見るとそれは全て金でできていた。ただちに銅器の売り主を探し、これを返した。
第八試
気の狂った道士があぜ道で薬を売っており、「この薬を飲んだ者はたちどころに死に、再び生き返って得道できる」と言っていたが、10日経っても買う者はいなかった。洞賓がこれを買うと、道士が「速やかに死後に備えるがよい」と言った。洞賓はこの薬を飲んでみたが、何も起らなかった。
第九試
洞賓は大勢の人々と共に河を渡っていた。しかし中流に至ると河が氾濫し、風が激しく吹き荒れ、荒波がどっと押し寄せた。人々はみな恐れおののいたが、洞賓は端坐し動かなかった。
第十試
洞賓がひとり部屋で座っていると、突然奇妙な化け物が無数現れ、洞賓に襲いかかり殺そうとした。しかし洞賓は正座したままで、少しも恐れることがなかった。次に数十もの夜叉が襲いかかってきた。また、血をしたたらせた死刑囚が泣きながら「お前は前世で私を殺した。今、私の命を償ってくれ」と訴える。洞賓は「人を殺したのなら、償うのが理だ」と言い、刀を取り自殺しようとした。
すると突然、空中に大声が響き渡ったかと思うと、鬼神達はみな姿を消した。ただ一人、手を叩いて大笑いする者がいる。見ると、それは鍾離権であった。「あなたを10回試してみたが、心が堅く何事にも動じない。きっと仙人となることができるだろう」と言い、彼は呂洞賓を弟子とした。
参照:Wikipedia