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VOICE 26. | 2015.February | Masaki Yokokawa

voice_PH_19-26-15

Text_Naoyuki Ikura

 

 

 

“ 食のセレクトショップ ” こと、ニューヨークから上陸した食材店『ディーンアンドデルーカ』。今では東京をはじめ地方都市にも店舗を展開し、全国区の知名度を誇る人気店だが、日本での第1号店はこの丸の内にある。今回はその仕掛人であり、ここ10数年にわたる街の発展を見続けてきた横川正紀さんの声に、耳を傾けよう。

 

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「新丸ビルが建つ以前の丸の内は、東京駅の目の前という絶好のロケーションにありながら、まるで陸の孤島でした。基本的にはオフィス街なので土日になると途端に人通りが減ってしまい、『ディーンアンドデルーカ』の一番のお客様は新丸ビルの建設にあたっている工事現場の方々でしたね。それも10年が過ぎて、ようやく馴染んできた感じ」

 

 

『ディーンアンドデルーカ 丸の内』がオープンしたのは2003年。そう、この街が現在のように商業都市としても注目を集め、盛り上がり始める前夜のこと。言ってしまえば、オフィスビルが整然と建ち並ぶだけの無機質な一帯だった。

 

「昔から丸の内で働かれている方々からしてみれば、理解に苦しんだはず。何てことをしてるんだ!って(笑)。元々は何もなかったオフィスビルの1Fが店舗スペースになり、よそ者が入ってきて商売を始め、すごい違和感を憶えたと思うんですよ。ですが、それを続けてきて、とても良い街になった。僕、いつも思うんですが、お店をオープンして最初の半年や1年は、おろしたての革ジャンや新調したスーツのようにイマイチしっくりとこない。だけど長く時を一緒にすると体に馴染んで、着心地が良くなるでしょ? あの感覚に似ていて、少しずつ人々の生活に馴染んで、居心地の良いお店になっていく。仲通りや丸ビル、新丸ビルを中心とする丸の内という街も、最近になって馴染んできたなと」

 

「この丸の内ハウスだって、オープンした当初は非常に違和感が強かった。丸の内の人も外の人たちも、この空間とどう接すれば良いのか戸惑ったと思うんですよ。だけど世の中の二手先くらいまで見据えている人たちが意志を曲げずに続けてきたから、このようにフィットしてきた。お店でもモノでもあらゆる物事に通じますが、始めてすぐに受け入れられることって大体すぐに飽きられちゃうんですよね。だけど、じっくり、ゆっくり浸透したことはなかなか廃れない。そういった意味でも、丸の内ハウスを含めた丸の内の街づくりは成功しているんじゃないかと思います」

 

 

 

かくして、人々の生活に “ 馴染み始めた ” 丸の内。そして、この街が受け入れられた理由を横川さんはこう見ている。

 

「日本では昔から、仕事は仕事、遊びは遊びと、公私を白黒ハッキリ区別する文化が根付いてきました。ですが、人生の大半は仕事に時間を費やすわけです。であれば、より多くを過ごす場所を少しでも豊かに、充実させたいと考えるのは当然のこと。つまり、ビジネスとプライベートの両方が重なるグレーな領域が大切だと思うんです。それが上手に存在しているのが丸の内であり、この街には住居こそないにせよ、それと同じくらい大事な時間、仲間とのつながり、楽しさが集まっている。だから、誰もが当たり前に家路につくように、自然と足が向かう街へと成長しつつある」

 

「この丸の内ハウス然り、『ディーンアンドデルーカ』然り、色々な使い方があっていいと思っています。例えば、近隣で働く方々は主にウィークデー、地方の方は休日、海外の方は暦に関係なく利用します。そうやって入り交じっているところに、不思議とリアリティがあるんです。そして目的なく訪れてブラブラと冷やかしているだけでも、何だか楽しい空間になっている。食事をするだけじゃない、食材を買うだけじゃない、プラスαの面白みがあり、それらアレコレが交差して複雑な時間が生まれ、ルールに縛られない自由な楽しみ方が演出されているところが魅力ですよね」

 

「丸の内ハウスなんて、まさに象徴的。開放的なダイニングがあると思えば、突然、路地裏的なスナック『来夢来人』があったり。正直、最初はみんな “ 丸の内にスナック!? ” って違和感をもったと思う。それが今ではなくてはならないお店になっている。しかも、いかにもスナックで管を巻いていそうなお客さんではなく、丸の内然とした大人が崩れているところがすごくいい! そもそも面白い人たちが集まっている街なのに、そういう面白い側面を表に出せる場所がなかったから、その受け皿にもなっているし。そうそう、僕も先日、中目黒からわざわざ足を伸ばして、カラオケを歌いまくりました(笑)。スナックなんてどこにでもあるのに、なぜか、ここじゃなきゃダメだったんですよね」

 

 

 

 

 

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