Text_Hiroshi Yamamoto
今回のゲストは日夜、DJとしてフロアを揺らし、安室奈美恵やAFTERSCHOOL、山下智久といったそうそうたる面々の楽曲のプロデュースに加え、代々木ビレッジの「MUSIC BAR」や「GINZA MUSIC BAR」のディレクションなども手がける、音楽家の大沢伸一さん。丸の内ハウスのオープン当初から幾度となくDJとして選曲を担当してきた彼が語る、丸の内という街、丸の内ハウスという場所における音楽の役割について。
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「東京という大都市において、もっともシンボリックなビジネス街が丸の内ですよね。昼間はビジネスマンでごった返すけど、夜は人が少ないイメージ。僕自身、丸の内ハウスができるまで、遊び場として足を運ぶことはほとんどありませんでした」
一方で例外もあるという。
「実は昔から時計が好きで。時計の修理のためにピンポイントで訪れていたお店はあるんです。ただ、だからといって街を巡るようなこともしていませんでした。丸の内ハウスができてからですね、プライベートでもちょくちょく訪れるようになったのは。新丸ビル自体が街のような作りなので、ショッピングに食事、お酒にカラオケまで、ここだけで充分楽しめます」
そんな大沢さんが初めて丸の内ハウスに訪れたのは、自らDJとして参加した片山正通さんの作品集の出版記念パーティだという。
「オープン間もない頃ですよね。片山さんの作品集の出版記念パーティにDJとしてオファーをいただいて。初めてフロアを見たときは、とにかく驚いたのを憶えています。そもそもワンフロアをこういう風に使う商業施設って日本で見かけないですからね。ほとんどの店舗がオープンで、通路にもソファが置いてあって、ミラーボールまで設置されている。しかも場所は東京のど真ん中、丸の内ですからね。以降、僕自身の丸の内に対するイメージはガラッと変わりました」
日夜、クラブでプレイをしているDJ・大沢伸一さんは、テクノロジーの進化によって急激に変化し続けている音楽の取り巻く環境をどう見ているのか。
「2000年代以降、音楽がきちんと聴ける場所って極端に減ってきているんですよね。かつて多種多様な音楽をプレゼンテーションしてくれていたCD、レコードショップには行かなくなったし、売れなくなったし、結果潰れてしまう。今となっては良質な音楽を聴ける場所って、クラブとライブハウスとカラオケくらいしかないわけですよ。しかも、一番身近な場所はカラオケですよね? でも、カラオケで流れる音というのは、アーティストが作った曲のバックトラックをシンセサイザーで真似したものばかり。そんな環境では、音楽的な素養が育ちにくいんですよね。クラブも一部ではお祭り騒ぎの場所になっているし、ライブは好きなアーティストがいないと意味を持たない。つまり、僕らの日常のなかで音楽がインプットされる場面がほとんど無いのが現状なんです」