Text_Yasuyuki Ouchi
個性的な店舗と開放的なテラスからなり、深夜まで過ごせるダイニングやバーが集う飲食店ゾーン丸の内ハウス。2007年のオープンより「街のゲストハウス」をコンセプトに、アートや音楽といった様々なイベントを開催するなど、 これまでにないレストランゾーンとして新たなカルチャーを発信し続けている。 7年目を迎えた今、改めてその魅力に迫るべく、この丸の内ハウスに携わる方々をゲストに、お話をうかがっていく。
第1回のゲストは、日本を代表する空間プロデューサーにして、ここ丸の内ハウスの総合プロデュースも務める山本宇一さん。日本一のオフィス街である丸の内。そんな誰もが持っている丸の内のイメージを変えようと試みたのが丸の内ハウスだったという。 オープンから6年が過ぎた現在、実際に丸の内ハウスをカルチャーの発信基地として、 街は大きく様変わりをしてきた。
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「丸の内という街を変えるつもりでプロデュースした空間なので、 素直に、変わってきてよかったなと思っています。 カルチャーという意味においては、丸の内がニュートラルだったというところも大きいですね。 白いキャバスみたいだったので、いろいろな事に挑戦できましたし、反応もすごくあって面白かったです。 結果として、他に例のない街になってきたのではないでしょうか」
そう、これまでに山本宇一さんが手掛けてきた「バワリーキッチン」や「ロータス」のある駒沢や表参道などとは、まったく趣の異なる街でのプロデュースとなったのが、この丸の内ハウスだったのだ。それは店舗やゾーンといった域を超えた、街全体のプロデュースであったのかもしれない。
「駒沢や表参道は、一日中過ごしている人やその土地が住所の人はたくさんいますよね。 でも、丸の内という街には人が住んでいないんです。 だからこそ丸の内ハウスを拠点に、人が生息している感じをつくりたかった」
それは、各店の区別がきっちりとしていないオープンなスタイルで、行き来がしやすく人との出会いを大切にしている丸の内ハウス独特な空間からも感じることができる。
「街の機能ってあるじゃないですか。 メインストリートがあって、裏通りがあり、何もない陰の部分もある。 そういったことを意識して丸の内ハウスもつくりましたね。なんとなく表があって裏もある、隠れ家っぽいところもあったりと…。でも、どんな街にもあるそういった側面が丸の内という街にはないんです。ビルが軒を連ねてすべてが同じ方を向いていて表しかない。小道もないんです。 だから丸の内ハウスでは裏通りをイメージしてあえて通路を細くしたりと。こういったことも居心地のよさとリンクしていると思うんですよね」